子どものころ、料理に合わせて箸置きを選ぶ毎日のお手伝いが好きでした。箸置きを置くだけで、凛とした食卓に近づくから不思議です。箸置きはいつ頃から使われているのでしょう。
そもそも日本の箸の歴史は2000年以上とも言われ定かではないのですが、神様へのお供えものを直接触れないよう、神様用の神器であったようです。ですので、日本の箸は今も神事と深く関係しており、箸マナーにも、沢山の感謝や願いが込められています。
箸置きは、日本で生まれ、神様がお使いになる御箸を置くための「箸台」が由来とされています。
「箸置きがなかったら、箸はどこに置けば良いですか?」よく聞かれる質問です。最近はめっきり箸置きを普段から使う家庭も少なくなりました。取り皿など平皿に、箸先を立てかけましょう。それでもやはり箸は箸置きに置くと、安定感が違います。なんだか御箸も心地がよさそう!
もともと神様の御箸のお休み処ですから、箸置きにもマナーがあります。日本では、箸を手前横一文字に、左3cmほど箸先が出るように置きましょう。「箸先1寸まで」が美しい箸の使い方。なぜ一寸かというと・・・。
一寸(3cm)をちょうど人の口幅に見立て、大口を開けずに丁寧にいただく所作なのです。また、箸置きに置くことで、両手を使って丁寧に箸を持ち上げることができます。
魚もお肉も果実も豆も海藻も・・・。全て命があったもの。私たちは、一膳の箸を通して神様とともに「たべものの命」をいただいています。
「箸休め」という言葉のとおり、箸を箸置きに休ませることで、おのずとゆるりとした時間枠ができて、食事をゆったりと楽しむこともできますね。丁寧にいただきやすいので、美しい所作ともに食べ物の消化力もアップしますよ。
箸置きを出して、食後はしまう。箸置きによって、食事の始まりと終わりのけじめも身に尽きます。日本ならではの素敵な食習慣です。お客様へのおもてなしにはもちろん、自分自身を大切にするためにも、箸と箸置きで感謝あふれる「一食一食」大切にしたいですね。